2002年8月21日の学術研修会の報告

学術委員会・石塚政男

8月21日は、最初に塩野義製薬株式会社の第九学術部課長松原和幸氏により、持続性選択性H1受容体拮抗・アレルギー性疾患治療剤「クラリチン錠10mg」についての説明があり、引き続いて星野皮フ科アレルギー科クリニック院長星野稔先生(前筑波大学臨床医学系皮膚科講師)により「アレルギーについて」の特別講演がありました。星野先生には、お忙しい中、アトピー性皮膚炎を中心にスライド写真や治療薬のお話を交えて、我々きぬ薬剤師会の為に講演して頂きました。ありがとうございました。

以下、クラリチン錠については塩野義製薬(株)の松原氏にまとめていただいた原文を、星野先生の特別講演については学術・石塚が記録した内容の概略を記載いたします。



きぬ薬剤師会御中

平成14年8月27日
塩野義製薬(株)松原和幸

先日は貴重なお時間を頂きまして誠にありがとうございました。厚く御礼申し上げます。当日のクラリチン製品説明の内容を報告させていただきます。

クラリチン(一般名ロラタジン)は1988年より欧州、米国を中心に100ケ国以上の国々で使用されている持続性H1受容体拮抗、アレルギー性疾患治療剤です。
慢性蕁麻疹に対して投与2週後に80.5%の改善率を示し、そう痒に89.1%,発斑に対して87.5%の高い改善率でした。
アレルギー性鼻炎(通年性)においては国内で初めて投与3日後に評価しプラセボ群と比較し有意に鼻症状を改善。また季節性のアレルギー性鼻炎の症状を投与一日目でプラセボ群と比較し有意に改善しました。クラリチンは早期に効果発現の期待される薬剤です。
ヒスタミン誘発皮内反応抑制作用においてd−マレイン酸クロルフェニラミンに対して膨疹、紅斑ともに有意に抑制作用を示しております。
眠気の発現頻度はプラセボ群と同程度で眠気の少ない薬剤です。また自動車運転操作能力に及ぼす影響についてプラセボ群との比較試験で同程度で差は有りませんでした。
心電図への影響についてクラリチン40mg(通常量の4倍)とプラセボ群で検討しました。
結果はQTc PR QRS すべて影響はありません。


星野皮フ科アレルギー科クリニック院長
星野稔先生特別講演 「アレルギーについて」の概略 
  

1) アレルギーの分類

2) 痒み
・痒みのメカニズム
・痒みの診断
・角質層バリアー破壊による痒みのしくみ
・掻破による病変の増悪のしくみ
・痒みと掻破の悪循環と薬物治療の関係
・ステロイドの必要性
・アレルギー疾患治療薬開発の流れと抗ヒスタミン薬の位置付け

3) アトピー性皮膚炎
・アトピー性皮膚炎の定義
・アトピー性皮膚炎の発症のメカニズム
・アトピー性皮膚炎のスライド写真
・アトピー性皮膚炎の眼合併症
・アトピービジネス
・アトピー性皮膚炎と白内障の合併頻度
・アトピー性皮膚炎に伴う網膜はく離
・アトピー性皮膚炎の眼科管理
・アトピー性皮膚炎とその制御ポイント
・アトピー性皮膚炎のスキンケア
・ダニ対策
・抗炎症対策としてのステロイド薬 局所投与の位置付け
・痒み 掻破サイクルとストレス 掻破サイクル及びその対策
・アトピー性皮膚炎の重症度と治療法
・アトピー性皮膚炎の治療法のフローチャート

4)蕁麻疹
・蕁麻疹の主な発症因子
・仮性アレルゲン 
 免疫反応によらないでアレルギー様の症状を起こす物質
・抗アレルギー薬の作用点
・蕁麻疹の治療

5)接触性皮膚炎
・接触性皮膚炎における細胞動態
・夏場の皮膚病 虫等による
・接触性皮膚炎の治療

6)皮膚掻痒症
・全身性疾患と皮膚掻痒症
・内臓疾患と皮膚掻痒症
・皮膚掻痒症の治療

7)ステロイド剤
・ステロイド剤の抗炎症作用
・ステロイド外用剤の適応疾患
・ステロイド剤のランク
・ステロイド外用剤の選び方
・ステロイド剤の副作用
・使用期間、量、範囲
・ステロイド外用剤の功罪

8) 花粉と関連が指摘されている食物
(口腔アレルギー症候群)

以上が特別講演の概略ですが、実際の講演内容はもっと濃く詳しくわかり易く、そして臨床症例のスライド写真を数多く見せて頂き、たいへん勉強になるものでした。