「全国統一調剤事故防止研修会」
−患者さんの命と健康を守るために−

概要・報告 橋爪 祐子(すばる中央薬局)

9月24日(火)に開催された上記研修会の内容について簡単にご報告いたします。


初めに、水海道保険所の武井敬司様より、このテーマについて以下のようなお話がありました。

  1. 「薬局・薬剤師のための調剤事故防止マニュアル」の内容に添って、調剤過誤の原因を理解・把握し、その原因を取り除くための対策を具体的に講じる必要があること。
  2. 調剤事故防止対策として、調剤室の環境を整備し、調剤過誤を誘発する要因を極力排除する工夫をすること。
  3. 調剤業務の流れを見直して一人ひとりの薬剤師が調剤事故防止に日々心がけること。
  4. 処方監査を徹底すること。
  5. 疑義照会を徹底して、必ず疑義が解消した上で調剤すること。
  6. 処方監査や疑義照会の内容を再検討しながら、調剤監査を行なうこと。
    (薬だけでなく、薬袋やお薬情報の内容の確認も忘れない)

このようなことを徹底して行なうことにより調剤過誤を防ぐ努力をしていただきたい−とのこと。

 また、最近話題になっている中国産ダイエット食品による健康被害についてのお話もありました。
具体的に、「御芝堂減肥こう嚢」や「せん之素こう嚢」などの健康被害の事例と、その他に未承認医薬品を含む健康食品の名前を上げて注意をされました。
 一般の薬局で販売されている物はないようですが、患者さんからご相談を受けた時にきちんと対応していただくために、「ぜひチェックしておいていただきたい。」とのことでした。


 次に、去る、7月28日に開催された「調剤事故防止全国担当者会議」の内容を、薬剤師の末端にまでしっかり伝えることを目的として、私の方から以下のような話をしました。

本年、4月から7月の間に、薬剤師会に報告された調剤事故は16件ありました。 その事故について具体的に検証しながら、このような事故が繰り返されていることは、薬剤師の職能や医薬分業の根幹にかかわる重大な事態と捕らえなければならず、薬剤師という専門職としての信頼を回復するためにも調剤事故「ゼロ」にむけて具体的に行動を起こしていこうという方向で話をしました。
今回の内容は、
1. 調剤事故の現状
2. 調剤事故防止対策
3. 散剤調剤の留意点
という3つのテーマにそってまとめられており、

「1.調剤事故の現状」では、先に上げた16例の調剤事故を具体的に報告し、厚生労働省の行政指導にもあったように、疑義照会を徹底して行なうようにしなければいけないということを確認しました。 これからは処方箋どおりに調剤して事故が起きた場合でも、医師だけでなく薬剤師も法的に罰せられるということを肝に銘じて調剤事故の根絶に向けてすべての薬剤師が努力しなければならないということだと思います。

「2.調剤事故防止対策」では、調剤事故を防ぐ4つのポイントにそって事故防止対策について確認しました。 4つのポイントというのは、
@重大な健康被害を招く医薬品は区別すること。
A取り間違えを防ぐポイントは誤りやすい名称を知っておくこと。
B薬袋や薬剤情報提供文書等についても確認を怠らないこと。
C最終的なチェックは、必ず患者とともに行なうこと。

「3.散剤調剤の留意点」では、調剤事故の原因となった薬剤の約48%が散剤であったということから、今回散剤について重点的に調剤ミスを防ぐための留意点の確認をしました。
@類似名称の注意
A倍散のあるものの確認
B製剤量表示か成分量表示かの判断・確認
C常用量のチェック
D天秤のチェック
E装置瓶を取る時、量る時、戻す時の3回確認
F秤量漏れ、二重秤量を防止
G散剤計算メモの作成
H均一に混和する
I調剤監査の実施
J装置瓶への薬剤充填
以上の内容について順に話しました。

最後に、「調剤事故ゼロをめざして」ということで、インシデントの収集と評価が重要であること、調剤業務を標準化してミスの起きやすい環境を改善すること、処方監査を徹底して不明な点は必ず疑義照会を行なうこと、処方監査を再検討しながら調剤監査を行なうことを再度確認してまとめとしました。
さらに、万一事故が起きてしまった時に、事故にあってしまった患者さんにきちんとした賠償ができるように「薬剤師賠償責任保険制度」に加入していただくことをお願いしました。

参加された皆様には、この研修会の内容を一人でも多くの薬剤師、また薬剤師以外の薬局の職員の方に伝えていただけることを期待します。